野球肘が進行すると野球肘内側型(肘内側不安定症)から外側型(上腕骨小頭障害)へ進行し、さらにそのままにしておくと離断性軟骨炎と言う状態になってしまします。
ここまでいくと肘のスポーツ障害としては重症といえるでしょう。関節ねずみと言われるものも離断性骨軟骨炎ですね。
今回は野球肘でも離断性軟骨炎ついて書いていきたいと思います。
野球肘の外側タイプの概要はこちら
内側タイプはこちら
上腕骨小頭障害~離断性骨軟骨炎~とは
野球肘の進行期とされている離断性骨軟骨炎は10~16歳の少年に多いです。
その病態は肘の外側にある上腕骨小頭の軟骨の下の骨が運動ストレスにより壊死してしまい、関節内に離脱してしまうスポーツ障害になります。骨が取れてしまうわけですね。
関節内に離脱してしまったものは関節ネズミと呼ばれ肘の曲げ伸ばしでロッキングが生じ、動かすのが困難になる事もあります。
競技としては野球以外ではバレーボールや剣道の選手にも発生することがあり、肘以外には大腿骨内側部、距骨など関節を構成する骨の凸面に起こりやすいといえます。
ちなみに上腕骨小頭の場所は下記をご覧ください。
↑上腕骨小頭は肘の外側にある
離断性骨軟骨炎には段階がありますのでご覧ください。
透亮(とうりょう)期
上腕骨小頭の軟骨の下の骨や関節軟骨に壊死がみられる時期
その直径は1cm前後が多いとされています。
分離期
正常な骨と壊死した骨に分界線が生じる時期
遊離期
壊死した骨や軟骨が元の骨から離断され遊離体となり関節内に脱落した時期
いわゆる関節ネズミ。
→→関節ねずみとは?
野球肘外側タイプの症状
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主な症状は投球時・投球後の痛みです。
他にはうでに放散する痛みやだるさ。
急性期では肘関節の腫れ、関節液の貯留(関節に水がたまる事)がみられます。
上腕骨小頭部の圧痛もみられます。
また分離期以降では肘を伸ばしきる動きに制限がかかる事があります(肘の伸展制限)
初期は無痛で発見は困難ですが、練習後の肘周囲の違和感からはじまり肘の屈曲伸展、前腕の回内・回外の可動域が低下してきます。
↓左:中間位 真ん中:回外位 右:回内位
透亮(とうりょう)期
安静で痛みが消失
分離期
投げるたびに痛みがある
遊離期
遊離体により、ロッキングや激痛が生じることもある
野球肘外側タイプの原因
成長途上の上腕骨小頭に肘関節の外反による圧迫力や剪断力が繰り返し働く事で障害となります。
肘関節の外反ストレスは後期コッキング期~加速期で生じやすいです
野球肘の内側タイプの内側側副靭帯損傷が進行することで、いわゆる肘がゆるくなり(肘が外反しやすくなる状態)、その状態で投球を繰り返すことで上腕骨小頭にさらに圧迫ストレスを受けやすくなります。
この点により、外側タイプである離断性骨軟骨炎は内側タイプが進行して症状が悪化する投球障害といえます。
離断性骨軟骨炎の診断
初期では困難ですが、進行すると上腕骨小頭の圧痛を認めます。
上記の症状と合わせて押しての痛みがある場合は疑いましょう。
またレントゲンや超音波を使用し診断します。必要に応じてMRIなども行います。
野球肘外側タイプの治療/リハビリ
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透亮(とうりょう)期
数ヶ月単位での投球禁止
肘の安静により壊死部の修復が期待できます。
分離期
肘関節固定装具などにより保存療法を行いますが、野球を続ける場合は手術となります
遊離期
手術適応
遊離した骨の摘出や関節面の形成を行います。
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予後としては比較的良好ですが、初期で適切な処置を行わないと投球が困難になりこともあります。
進行し肘が外反肘という肘から先が外側を向いている状態になると遅発性尺骨神経麻痺を生じる可能性もあります。
また将来的に変形性肘関節症となるリスクも高くなります。
初期であっても肘周囲の筋肉の負担は大きくなっているで、ストレッチなどを行いましょう。
正しい筋出力で肘周囲の筋肉を“シメル”ことで肘関節を直接安定させるエクササイズもおすすめです。
筋出力のやり方
特定の筋肉ばかりに負荷がかかっているとバランスが崩れてよくないので、肘関節周囲筋の筋緊張を整えます。
1㎏程の軽い重りを持って行います。痛みが生じる場合は重りを持たずに行いましょう。重ければいいというわけではないので注意がして下さい。
早さも必要ないのでゆっくり行いましょう。
動作は手関節のみで行うようにし、肩関節や肘関節が動いては効果がでにくです。
(肘関節に関与する筋肉の多くは手首の動きに関与しますので、手首が大事になります)
座位で
肘関節屈曲位で前腕の回外・回内動作
肘関節屈曲位で手関節の屈曲・伸展
画像ではちょうどいいのがなく代用しましたが、本来はダンベルのようなシャフトが持ちやすいのがいいでしょう。
このシャフトは0.6kgですが、比較的安価なので購入しやすいかと思います。
またはこのようなタイプでもいいでしょう。重さもちょうどいいですね。
これ以上だと2.5kgのものが多く、少し負荷が強すぎるかもしれません。
肘関節の外反を制御する筋肉のフォロー
肘の内側(厳密には上腕骨)から始まる筋肉は一部肘の外反をしないように制御しています。
しかし野球肘になり負担がかかりすぎると、この筋肉群も過負荷により損傷してしまいます。
ストレッチ・リリース・上記の筋出力でフォローしましょう。
詳しくは野球肘のセルフケア方法をご覧ください。
腕の外側の筋肉をゆるめる
肘が外反していると腕の外側の筋肉が硬くなり、柔軟性がなくなってきます。
そのままの状態だと肘の外反が保たれたままになるので緩める必要があります。
腕の外側の短縮した筋肉は自分でケアが難しいですが、外側を触ってみて硬くなってきると部分を圧迫しながら関節を動かすとゆるみやすいです。
肩~肘の間なら硬い部分を圧迫しながら、肘の曲げ伸ばし。
肘~手首なら肘を伸ばしたまま硬い部分を圧迫し、手首の曲げ伸ばし。
くれぐれも患部を直接強く圧迫をしない様に注意して下さい。
投球障害予防エクササイズ
下記の投球障害予防エクササイズを行う事で離断性骨軟骨炎になる前に対処することができます。
野球肘になってからでは遅いので予防のために、症状がなくても行う事をすすめます。
野球肘にも関連するセミナーに参加メモ
肘の障害は肘が先走る投球に多いのも特徴です。それを防止するために肩甲骨・体幹を意識してトレーニングする事はとても大切です。
よろしれば下記のセミナーメモもご覧ください。
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さいごに
離断性骨軟骨炎は保存療法が選択されても長期の投球禁止を強いられるため、野球をやりたい少年期の選手には辛い期間となります。
腰椎分離症と同様でモチベーションの維持が大変重要になります。
投球ができない時期でも体幹や下肢のトレーニングを行う事で、投球を行うようになってからの糧となります。
体幹トレーニングはこちらを参考にしてみて下さい。
しっかり理解してもらい、トレーニングに励みましょう。
以上で「野球肘(離断性骨軟骨炎、外側型、進行型)」の説明を終わりにします。