投球障害で有名な疾患は野球肘や野球肩が上がるかと思います。
これらは痛みの出る部分は肘と肩で違いますが、大まかな原因は同じになります。
ここでは投球動作が多いピッチャーに絞って解説していきます。
また下記以外にもポイントはありますが今回は私が経験し、実践する事が多いポイントを絞ってわかり易く解説していきたいと思います。
肩甲上腕関節の可動域に関しては野球をやっている子で関節可動域に問題のある子は少ないので今回はスルーします。
投球障害予防エクササイズ
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ポイントを6つに絞りました。
投球障害の子・投球障害になる可能性が高い子に共通するポイントになります。
ご覧ください。
ステップ足の位置
インステップやステップ時に体重が真っすぐ乗っていない事で投球時にバランスが崩れ、それを補おうと無理に投げるため腕投げとなり、肩や肘の障害へとつながります。
対策の基本としてしっかり走りこむことです。
ありきたりですが、これは毎回同じ位置にステップするために必要な事です。
そして
・ニュートラルでのステップエクササイズとランジ
(「ステップエクササイズ」をご覧ください。)
・バーを使ったピッチャーズクスワット
を行いましょう。
内転筋の柔軟性
投球時、投球側(右投げなら右足)の下肢の筋肉で一番負担のかかる筋肉をご存知ですか?
それは内転筋です(日本臨床スポーツ医学会誌 2013年の投球動作解析)
この筋肉が投球時、体重の約2.8倍で大学生の短距離の大腿四頭筋と同等の張力が働くと言われています。
この負担のかかる部位に柔軟性が足らないと、内転筋の微小断裂や内転筋の付着部の炎症を引き起こしやすくなります。
また、股関節が開かない事でインステップの原因になり、腰部の回旋を必要以上に行わなくてはならないことで、腰椎分離症のリスクとなります。
(腰椎分離症についてはこちらをご覧ください→「スポーツでの腰椎分離症の治療とリハビリ」)
普段より股割りをすることで内転筋のコンディションを整えておきましょう。
胸椎の伸展・回旋
胸椎の伸展が制限されている状態ですと肩甲骨の内転・上方回旋がしっかりできず、結果テイクバック不足となり、肩関節の十分な外転ができなくなります。
(肩甲骨の内転=肩甲骨を脊柱に寄せる動き。肩甲骨・肩の安定と上肢を正確に上げるのに必要な動作
肩甲骨の上方回旋=上肢の挙上に必要な肩甲骨の回旋運動)
そのため肘が十分に上がりきる前に投球を強いられることで俗に言う“肘が下がった”状態での投球となってしまいます。
胸椎の回旋が出来ないのも同様の理由になります。
対策を下記に記載しておきますので、参考にして下さい。
深呼吸
しっかり胸椎・胸郭を意識して、胸で呼吸しましょう(胸式呼吸)。
上肢を挙上して行うとより効果がでます。
パピーポジション
深呼吸と並行してパピーポジションを脱力して行います(腰部に対してではなく、胸部に対して行うので角度は軽め)
腰の筋肉は脱力しましょう。自分では判断が難しいので、パートナーに触って確認してもらいましょう。
また脱力が難しい場合、胸の前にクッションなどをいれる事をおすすめします。
×過度にやり過ぎても良くありません↓
他動的に胸椎回旋エクササイズ
横向きに寝て膝を曲げます。上側の腕は身体の横に置き、全身を脱力します。
パートナーは腰の部分に座り、腰・骨盤が動かないようにします。
骨盤と肩に手を当ててゆっくりと背中後ろに捻っていきましょう。
左右行います。
腰部を捻らないように注意しましょう。
こちらも一緒にチェックすることをおすすめします。
「胸式呼吸を正しく行う事でパフォーマンスアップとスポーツ障害を予防」
肩甲骨の内転(大胸筋・小胸筋の柔軟性)
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肩甲骨の内転が出来ないと投球時に胸椎の伸展・回旋と同じ理由でテイクバック不足となります。
横向きで肩甲骨を内転しながら、上肢を水平外転します。
(上肢の水平外転=腕を外側に上げ、そこから後ろに引く運動)
その際肩甲骨に手を当て、肩甲骨を内側に誘導しながら行いましょう。
そのままゆっくり後ろにもっていくことで大胸筋のストレッチになります。
「腱の柔軟性・血流促進方法」を参考にすることで小胸筋にもアプローチできます。
柔軟性が乏しい選手に行うとストレッチが強くかかり過ぎてしまいますので、本人にストレッチ具合を確認しながら行いましょう。
上腕三頭筋の柔軟性
上腕三頭筋の柔軟性が不足すると肩関節の挙上に抵抗が掛かります。
野球でピッチャーをやっている子の多くは上腕三頭筋に筋硬結を認めます。
これも「腱の柔軟性・血流促進方法」を参考にすることでアプローチできます。
また、上腕三頭筋のセルフケアはこちらがオススメ
「強すぎない刺激の筋膜リリース、タイガーテールの紹介と使い方4選」
手関節屈曲筋のオーバーワーク
手関節を曲げる筋肉は主に肘の内側より伸びてきますが、この筋肉群の柔軟性が低下する事で付着部周囲で微小断裂を生じ、痛みを伴います。
またそのままにしておきますと微小断裂部が硬結となり、さらに部分的な柔軟性の低下を招きます。
マッサージボールなどを肘の内側から手首に向かってゆっくり適度に圧迫しながら転がしセルフケアも行いましょう。
マッサージボールでのセルフケアはこちらが参考になります
上記のエクササイズを終わったら最後に肘下がり予防のエクササイズを行いましょう。
肘下がり予防エクササイズ
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肘下がりを予防するエクササイズとして、近い地面に的を付けそこに投げ込むことです。
近い地面とはそれこそ50~100㎝ぐらいで構いません。
ただし上から投げるように指導します。
すると自然と肘を上げなくては投球ができないので、肘下がりの予防となります。
あくまでこれは肘を意識したエクササイズになりますので、足のステップはしなくても大丈夫です。
おおまかな投球障害に対するエクササイズは以上になります。
個人によって違いますがこれらを正確に行う事で、投球障害を起こすリスクは減ります。
それだけこれらの動きなどが出来ていないのが野球人に多いという事ですね。
投球障害の注意点
症状に合わせてリハビリや投球を開始しますが、気を付けてほしいのは何%の力でやるように指導しない事です。
これはすごく難しい問題で、何%の力というのが自分で分らない選手が多いのです。
50%で投げているつもりが70%だったということが多々あります。
ではどうするのかと言いますと「投球数でコントロール」することです。
ここで間違えるとせっかく痛みが取れていても再発する恐れがあります。
具体的な数字が知りたい方はこちらの本を参考にしてみて下さい。
野球に携わるなら読んでおいた方がいい本
投球障害に特化したおすすめの参考書に詳しい事は書いてありますが、この本は具体的なリハビリの段階に合わせて投球数の目安などが書いてあります。
またそれぞれの身体のパーツに合わせてリハビリやトレーニングが書いてあります。
参考にしてみて下さいね。
さいごに
投球障害を患っている子の多くは脱力が出来なくなり、リハビリの妨げになります。
早期にアプローチする事で、悪い癖の矯正もできますので、他のスポーツ障害と同様に治癒の近道になります。
一時的に投球動作をやめる事で患部の痛みは引いてきますが、同様のフォームで行うと痛みは再発する事でしょう。
投球障害に限らず、スポーツ障害は原因を突き詰め、対策をしないと何度でも痛みはでます。
痛みを取る為に痛みの出る動作をやめる事当然必要になりますが、それはリハビリにはなりません。
間違わないように注意しましょう。
野球関連はこちらもどうぞ
「ゴムチューブでの筋トレは間違いである2つの理由と正しい認識とは」
以上で「投球障害予防エクササイズ」を終わりにします。