オスグッド・シュラッター病と似たスポーツ障害に膝蓋靭帯炎や大腿四頭筋付着部炎があります。
スポーツをする方にはジャンパー膝という言葉の方が身近に感じるかもしれませんね。
しかしジャンパー膝というのはジャンプが多い競技に発症する膝の障害を指しますので、言葉的には広くなってしまいます。
ですので、ここではジャンプ競技に多い膝のスポーツ障害をオスグッド・シュラッター病、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病、そしてこのページに記載します、膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎に分けて解説していきます。
それぞれのページも存在しますが、オスグッド・シュラッター病やSinding-Larsen-Johanssen病と原因、治療、リハビリ、テーピングなどはほぼ同様になります。
それぞれの記事は下記を参考にして下さい。
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎とは
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太ももの前面にある大きく、有名な大腿四頭筋の走行は骨盤や大腿骨から開始され、膝蓋骨を介して脛骨粗面という骨のでっぱりに付着します。
このとき膝蓋骨から脛骨粗面の部分を膝蓋靭帯または膝蓋腱と呼び、この部位の炎症を膝蓋靭帯炎と呼びます。
そして大腿四頭筋が膝蓋骨につく部位での炎症を大腿四頭筋付着部炎と呼びます。
ちなみに膝蓋骨は一般的には「膝の皿」と呼ばれることが多いですよね。
↓皿の上が筋の付着炎、下が靭帯炎
これらは繰り返しの微小断裂で炎症を生じ、瘢痕や石灰化も引き起こす障害になります。
比較的子供よりも成人に起こりやすいです。
子供の場合はオスグッド・シュラッター病の方が頻度として多いですね。
これは成長過程で骨の硬化時期によるもです。
(成長期は骨が柔らかい時期から徐々に硬くなっていきます)
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎の症状】
それぞれ膝蓋骨(膝の皿)の上部、下部での押しての痛み、運動時の痛みががメイン症状です。
痛みによりスポーツの困難、パフォーマンスの低下につながることも少なくありません。
また初期は運動後の痛みですが症状の進行に伴い、運動中の痛み、日常生活での痛みと悪化していきます。
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎の原因
大腿四頭筋の過度な伸張性収縮により、膝蓋靭帯や大腿四頭筋が膝蓋骨付着部を繰り返し牽引する事が原因になります。
そして大腿四頭筋の過度な伸張性収縮を強要される原因が下記になります。
(オスグッド・シュラッター病と同様)
大腿四頭筋の短縮による伸張力の低下
大腿四頭筋・膝蓋靭帯の伸張力不足の状態で過伸張を繰り返すと痛みとなります。
→太ももの柔軟性の低下
骨盤後傾に伴う、大腿四頭筋の過度な伸張性収縮
骨盤が後傾することで大腿四頭筋を介し膝蓋靭帯は伸張性のストレスを受けやすくなります。
→猫背による後ろ重心によって、太ももの筋肉を介して膝の負担が増える
間違ったスポーツ指導
具体的にはディフェンス時など体制を低くする際に腰を下ろせといいますが、骨盤の前傾を使えずに腰を下げると骨盤後傾により膝だけを深くして体勢を低くしようとします。
結果大腿四頭筋・膝蓋靭帯が過度に伸張性収縮を要求され障害へとつながります。
正しい認識・指導はこちら→腰を下げるの正しい認識とは
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎が多いスポーツ
あらゆるスポーツに多いですが、ジャンプ競技に多いです。
バスケ、バレー、陸上のハードルなど
また競泳でスタート練習を数多く行った選手にも少なくないようです。
この場合も大腿四頭筋を過度に使用し、殿筋(股関節)がうまく使えない選手に多いです。
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎の診断
レントゲンで骨・筋肉の石灰化を確認すれば確定しますが、ジャンプ競技で膝蓋靭帯部や大腿四頭筋付着部で痛みを訴えた場合、レントゲンを撮らなくても容易に判断できます。
患部の圧痛と 下記の簡単なテストを行う事で判断しましょう。
このテストで痛みがある場合、膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎の自覚症状がなくても将来的にこの障害になる可能性は十分にあります。
ただし大腿四頭筋付着部炎には使えず、膝蓋靭帯炎のみに有効です。
外見上の特徴として大腿四頭筋の短縮により膝蓋骨高位(=膝蓋靭帯が過伸張)がみられるパターンもあります。
これは片足に症状がある場合は左右差を、両足の場合は同じ年齢・身長の子と比べるとわかります。
↓膝蓋骨が左右比べて位置が違うと膝のスポーツ障害のリスクが上がる
膝蓋靭帯炎のテスト方法
座位で膝を伸展(伸ばした状態)でリラックスします。
膝蓋骨を上から痛みのない範囲で強く押さえ、その状態のまま膝蓋骨を下から押します。
炎症や石灰化などがあると強い痛みを訴えます。
このテストは膝蓋骨を下から押す際に力が強いとかなり痛みが強く出ますので、ゆっくり力を入れるようにしましょう。
↓膝皿の下に痛みがあると、痛みが無くても黄色信号
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎の治療やリハビリ
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(オスグッド・シュラッター病と同様です)
症状が強い場合はその状態で行っても悪化するだけですので基本的にスポーツを中止します。
日常生活でも痛みを訴える場合、膝関節を過度に屈曲しないようにテーピングや包帯で制限をかけます。
熱感や圧痛が顕著な場合はアイシングをしますが、膝蓋靭帯は血流が乏しいんで症状に合わせて擦ったり、温熱治療を積極的に行う事が必要です。
また症状が中々落ち着かない場合は注射を行う事もあるようです。
痛みの状態を見てリハビリも行います。ほとんどのケースでリハビリを行わないと一時的に痛みが取れても、再発するためです。
基本的にリハビリは上記の原因が再度生じないようにするために行います。
大腿四頭筋のストレッチ
純粋に大腿四頭筋の伸張力が低下する事で、スポーツ中に膝蓋骨周囲の組織に伸張性ストレスが強く加わるので柔軟性はほしいところ。
ストレッチ時に膝蓋靭帯炎部など患部に痛みがある場合は、落ち着いてから行いましょう。
膝の下にクッションを入れないと膝が痛いので忘れずに入れてくださいね。
大腿四頭筋の硬結部のリリース
膝伸展機構のスポーツ障害は大腿四頭筋に硬結と言って筋肉のよくない塊がほぼ確実に存在します。
これは筋肉が正常に働かなく、無理な負担が掛かることで出来てしまうもので、硬結周囲は正確な伸張ができなくなります。
硬結部を軽く圧迫しながらゆっくり擦って下さい。
難しい場合はタイガーテールを使うと比較的簡単にできます。
→強すぎない刺激の筋膜リリース、タイガーテールの紹介と使い方4選
タイガーテールは患部以外へアプローチすることができますので、症状が強くても行うことができるでオススメ。
骨盤後傾予防エクササイズ
骨盤の後傾を防ぐ事でハムストリングスの遠心性収縮を可能にします。
ハムストリングスの遠心性収縮ができるようになると大腿四頭筋の過度な収縮を防ぐことができます。
「骨盤後傾予防エクササイズ」に具体的に記載してありますので、参考にして下さい。
着地のエクササイズ
着地の際、骨盤が後傾位になると大腿四頭筋が過度に伸張性収縮を要求されるので、骨盤後傾位とならないように着地の練習が必要になります。
上記の姿勢からジャンプし、できるだけ同じ姿勢で着地します。
着地の姿勢のまま大腿四頭筋とハムストリングスを触り、ハムストリングスの方が硬く、収縮していればOKです。
着地時の音があまり鳴らないように指導するのも一つの有効な方法です。
ジャンプの着地についてはこちら→ジャンプの着地音が大きいとよくない理由
簡単なセルフケア
大腿前面を軽く圧迫しながら擦る事で、筋膜リリースを促します。
本格的に行うのは難しくても、きちんと行う事で症状の悪化を防ぐことが出来ます。
膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎のテーピングのやり方
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膝蓋靭帯炎やジャンパー膝のテーピングは大腿前面上部から膝蓋骨を介し脛骨粗面まで貼ります。大腿四頭筋の走行と同じですね。
膝蓋骨高位がみられる場合は膝蓋骨を上から押させるテーピングを貼ることもあります。
↓大腿四頭筋のテーピングは足が外を向かないよう(がにまた)に注意して行う
↓もっと股関節に近いところまでテーピングは貼ってもok
↓膝蓋骨を足の方へ圧迫誘導して貼るといいかも
私の場合はテーピングの種類はワーデル、マルチポアを使用します。
テーピングについて
テーピングについての各記事は下記を参考にご覧ください。
選手目線のテーピングの比較記事はこちら
テーピングの種類についてはこちら
テーピング情報のまとめはこちら
あくまでテーピングはサポートになります。これで治癒することはありませんので、注意して下さいね。
さいごに
膝の伸展機構(膝を伸ばす組織全般)の障害はスポーツをする上で高頻度に遭遇する障害です。
「成長期のいわゆる成長痛について」に書いてあるように完全にサポートするのは難しいと考えていますが、上記のリハビリを行う事で、症状の緩和はかなり望めますのできちんと行いましょう。
セルフケアも忘れずに行いましょう。
また上記の原因には書いていませんでしたが、進学し部活をはじめ、夏の前後に多いのも特徴です。
以上で「膝蓋靭帯炎/大腿四頭筋付着部炎」の説明を終わりにします。