骨折の後遺症や一部身体の使い方、生まれつきの骨の構造で手の小指側にしびれなどの神経症状が出る尺骨神経麻痺の解説になります。
スポーツ以外でも様々な原因で神経麻痺を生じますが、ここではスポーツに絞って解説していきます。
ご覧ください。
【遅発性尺骨神経麻痺とは】
名前の通り急性に生じた神経麻痺ではなく持続的に尺骨神経が刺激され、マヒや運動機能の低下を生じる疾患です。
尺骨とは腕の外側にある骨ですが、いくつか神経が圧迫されやすいポイントがあります。
小指側のしびれの原因1 肘部管
肘の内側を机などにぶつけるとビーンとすることはありませんか?
そこが肘部管といい、尺骨神経が通っていて神経が刺激されやすいポイントになります。
小指側のしびれの原因2 Guyon管(ギヨン管)
手首の外側の少し先にある尺骨神経の通り道をギヨン管と言い、この部分の圧迫は手の平にしびれなどの神経症状を出します。
基本的に手の甲側への影響はありません。
肘部管での神経症状よりも範囲が狭いのが特徴です。
【尺骨神経麻痺の症状】
尺骨神経領域の感覚異常、進行すると小指側の力が入りにくくなり小指の筋肉が痩せてきてしまします。
そのままにしておくと鷲手といい手が変形してきますが、多くの場合その前に医療機関へいく事になると思います。
赤:尺骨神経固有支配領域
黄:尺骨神経領域
<低下する筋肉>
短母指屈筋、母指内転筋、小指外転筋、短小指屈筋、
小指対立筋、短掌筋、深指屈筋、虫様筋、
尺側手根屈筋、背側骨間筋、掌側骨間筋
【尺骨神経麻痺の原因】
尺骨神経麻痺はギヨン管か肘部管で圧迫される事がいいですが、それらで圧迫される原因を紹介します。
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尺骨神経が急激に刺激される
肘をぶつけたりしてビーンとなるのがそうです。また骨折などの外傷の際、尺骨神経が刺激をされると症状がでます。
尺骨神経が持続的に刺激される
骨折(上腕骨外か骨折)の後遺症で腕の変形により尺骨神経が持続的に圧迫を受けることがあります。
その際に尺骨神経症状が出る事があります。
生まれつきリスクがある
上腕に対し肘から先が外を向いた状態を外反肘と言いますが、先天的に外反している人もいます。
その人が繰り返しの肘屈曲・伸展(肘の曲げ伸ばし)を行うと肘の内側で尺骨神経が伸ばされ神経症状を出すことがあります。
多くの場合両肘とも外反肘である事がほとんどです。
【尺骨神経麻痺が多いスポーツ】
バスケ、野球、テニス、柔道
肘を繰り返し曲げ伸ばしする競技、肘に外反ストレスが繰り返し加わる競技に生じやすいです。
【尺骨神経麻痺の診断】
尺骨神経領域の感覚異常がある人に対し、問診にて既往歴やスポーツの状態などを聞きます。
その際肘の形もチェックします。外反肘かどうか?肘の骨折もしたことがあるか確認します。
そして尺骨神経領域を触り感覚異常があるか確認。
神経障害は原因である神経と、その神経が支配している皮膚・筋肉の感覚領域が一致します。
また、手首より手前ににしびれがある場合はギヨン管による神経圧迫の可能性がかなり低くなります。と言うのもギヨン管は手首よりやや指先よりにあるためです。
他にテストを行います。
~フローマンサイン~
両手の親指と人差し指で紙をつかみ、左右に引っ張る。紙をつかむ際は母指の根元まで紙を入れる事です。
この際、親指の指を曲げて紙を引っ張ったら陽性になり神経障害が疑われます。
神経障害がある場合は母指内転筋がうまく作用しないため、母指の屈筋を使用するため母指を曲げて紙と掴もうとします。
~チネルサイン~
圧迫など神経が障害を受けている部位をコンコンと叩くとその神経領域に神経症状が拡散します。
比較的信ぴょう性は高くよう使います。
【尺骨神経麻痺の治療とリハビリ】
尺骨神経麻痺の治療とリハビリについてです。
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尺骨神経麻痺の治療
初期であれば経過観察を行います。
症状が進行して尺骨神経領域にしびれが強くなったり、筋力低下が顕著に出る場合は尺骨神経が圧迫を受けている部位に対し、尺骨神経が圧迫を受けないように手術も行う事があります。
個人的には筋力低下を生じたら手術に踏み切った方がいいのではと考えています。
尺骨神経麻痺のリハビリ
手術に踏み切る前にリハビリとして尺骨神経の圧迫が受ける原因をみつけのその対策をします。
いくつか例をあげましょう。
バスケ:シュートにて肘の動きを強く使わない為に、手首のスナップを強化する。
テニス・野球:肘の外反が強くならないために、肩や手関節の可動域エクササイズ・筋出力エクササイズを行う
共通:肘の外反を悪化させない為に、腕の外側の筋肉を緩める
肘の外側の筋肉が硬いと腕自体が外へ外へと持っていかれ、結果尺骨神経麻痺の原因で多い外反肘へと誘導されてしまいます。
【10代 バスケプレーヤーの話】
現在本人は通院せず、親御さんから聞いた話になりますが参考になれば幸いです。
以前、高校の部活でバスケをしている子がたまに痺れが生じると話をしてました。頻度的にはそれほどでもなかったと思います。
その後その子は大学に進学し現在大学でバスケをしていますが、先日遅発性尺骨神経麻痺の手術を受けたそうです。
手術は尺骨神経溝で尺骨神経が外に飛び出てくるのを押さえて固定するものだったと思います。
尺骨神経を肘関節屈曲位(肘を曲げた状態)で固定したあと、その角度のまま固定材で3週間固定し、三角巾などで手を吊ります。
肘を伸ばすと神経を抑え込んだと言っても、神経が出てきてしまうおそれがあるためでしょう。
初期は感染症対策でお風呂はだめだったようですが、徐々にお風呂も許可されたようですね。
そして肘関節屈曲位での固定は寝るときが地味に大変なんですよね・・・
皆さんも行うとわかりますが、肘を伸ばせないで寝続けると凄いストレスになります。
そして個人的な意見ですが関節、ひときわ肘関節の3週間の固定は怖いですね。
肘関節は固定しますと拘縮と言って固まりやすい関節になります。
同じ角度での固定はマックスでも2週間ですね・・・
って話が逸れてしまいましたね。
固定期間は関節を動かさないように力を入れるよう指導しなくてはいけません。(等尺性収縮収縮)
手指の運動も同様です。本人は恐がりますが、筋力低下や感覚が鈍ってしまうので医師の指示のもと行うべきでしょう。
今はまだ固定が取れた段階ですので、先の話は聞いていません。
無事に復帰した後に今までと大きな違和感はないか。
プレーを開始してから同じような事が起こらないか。
このあたりがポイントになるとともに、再発を防ぐ為に手関節、リストのスナップの強化が必須になるでしょう。
スナップを強化する事で、肘関節での伸展エネルギーを押さえる事ができます。
現段階では以上になります。
また先のお話しを聞くことができましたら、再投稿していきますね。
【さいごに】
遅発性尺骨神経麻痺はそれほど多い疾患ではないですが、原因がわかりにくいため不安になったり、違和感にイライラしたり、痛みとは違うので理解されにくかったりととても状態の把握しにくい疾患になります。
痛みじゃないからとそのままほっておくと症状が進行しますので注意が必要ですね。
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