あまり聞きなれないスポーツ障害であるシンディング・ラーセン・ヨハンソン(Sinding-Larsen-Johanssen)病ですが、原因や症状などはオスグッド・シュラッター病や膝蓋靭帯炎・大腿四頭筋付着部炎であるジャンパー膝に似ています。
膝前面のスポーツ障害はスポーツをハードに行う成長期の子供たちの悩める種であることは、みなさんもご存知でしょう。
ここではシンディング・ラーセン・ヨハンソン病になりやすい子の特徴をはじめ、正しいリハビリ、テーピングのやり方も掲載してあります。
また似た部位のスポーツ障害として「ジャンパー膝」や「オスグッド・シュラッター病」があります。
それぞれのページも存在しますが、オスグッド・シュラッター病と原因、治療、リハビリ、テーピングなどはほぼ同様になります。
よろしければ下記を考にしてみて下さい。
Sinding-Larsen-Johanssen(シンディング・ラーセン・ヨハンソン)病とは
太ももの前面にある大きく、有名な大腿四頭筋の走行は骨盤や大腿骨からはじまり、膝蓋骨を介して脛骨粗面に終わります。
このとき膝蓋骨から脛骨粗面の間の部分を膝蓋靭帯または膝蓋腱と呼び、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病はこの膝蓋靭帯の膝蓋骨付着部に骨化異常(石灰化)をおこす疾患になります
好発年齢として10~12歳の男子に多いです。
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病の症状
- 膝蓋骨下部の圧痛・運動時痛
- 痛みによりスポーツの困難、パフォーマンスの低下
- 初期は運動後の痛みですが症状の進行に伴い、運動中の痛み、日常生活での痛みと悪化
痛みが出る場所は膝蓋靭帯炎と極めて近い場所になります。
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病の原因
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膝蓋靭帯の伸張力不足が根本としてあり、大腿四頭筋の過度な伸張性収縮により、膝蓋靭帯の膝蓋骨付着部を繰り返し牽引する事が原因になります。
→膝蓋靭帯と大腿四頭筋の負担が大きい状態でプレーすると、お皿の下に痛みがでます。
そして大腿四頭筋の過度な伸張性収縮を強要される原因は下記になります。
(オスグッド・シュラッター病と同様)
大腿四頭筋の短縮による伸張力の低下
大腿四頭筋・膝蓋靭帯の柔軟性不足の状態で過伸張を繰り返し要求されると生じます。
→大腿四頭筋と膝蓋靭帯の柔軟性不足
骨盤後傾に伴う、大腿四頭筋の持続的な伸張性収縮
骨盤が後傾することで大腿四頭筋を介し膝蓋靭帯は伸張性のストレスを受けやすくなります。
→後ろ重心になると大腿四頭筋の負担が大きくなるので、結果膝の痛みに繋がる
間違ったスポーツ指導
具体的にはディフェンス時など体制を低くする際に腰を下ろせといいますが、骨盤の前傾を使えずに腰を下げると骨盤後傾により膝だけを深くして体勢を低くしようとします。
結果大腿四頭筋・膝蓋靭帯が過度に伸張性収縮を要求され障害へとつながります。
→膝を曲げたディフェンスは膝の負担が強く、傷めやすい
腰を下げるただし認識→腰を下げるという指導は×。正しくは?
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病が多いスポーツ
あらゆるスポーツに多いですが、ジャンプ競技やキックを頻繁に行う競技に多いです。
バスケ、バレー、ラグビー、アメフトなど
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病の診断
レントゲンにて骨の石灰化を膝蓋靭帯の膝蓋骨付着部で確認すれば確定します。
また年齢的にジャンパー膝は比較的に成人に、オスグッドは部位が違う事から、ある程度推察できます。
石灰化とは元々は硬くない組織がなんらかの原因により、部分的に骨の様に硬くなってしますこと。筋肉に石灰が付着すると十分な伸張が出来ない為、痛みがでやすい。
他に有名な石灰の問題に「石灰沈着性腱炎」がある
下記の簡単なテストを行う事で判断することも可能です。
これはシンディング・ラーセン・ヨハンソン病の自覚症状がなくても痛みを訴えた場合、将来的にこの障害になる可能性は十分にあります。
しかしオスグッド・シュラッター病やジャンパー膝と治療方法やリハビリは似ているので、確定診断は必要ないかもしれませんが。
外見上の特徴として大腿四頭筋の短縮により膝蓋骨高位(=膝蓋靭帯が過伸張)がみられるパターンもあります。
これは片足に症状がある場合は左右差を、両足の場合は同じ年齢・身長の子と比べるとわかります。
↓膝蓋骨高位とは反対や他の子と比べて膝のお皿が股関節に近くなっていること。
基本的に太ももの柔軟性が低下して起こる
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病のテスト方法
座位で膝を伸展(伸ばした状態)でリラックスします。
膝蓋骨を上から痛みのない範囲で強く押さえ、その状態のまま膝蓋骨を下から押します。
ここで炎症や石灰化などがあると強い痛みを訴えます。
このテストは膝蓋骨を下から押す際に力が強いとかなり痛みが強く出ますので、ゆっくり力を入れるようにしましょう。
↓このテストは結構痛いので注意しながら行う事
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病の治療、リハビリ
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(オスグッド・シュラッター病と同様です)
症状が強い場合はその状態で行っても悪化するだけですので基本的にスポーツを中止します。
日常生活でも痛みを訴える場合、膝関節を過度に屈曲しないようにテーピングや包帯で制限をかけます。
そして痛みの状態を見てリハビリを行います。
ほとんどのケースでリハビリを行わないと一時的に痛みが取れても、再発するでしょう。
基本的にリハビリは上記の<原因>が再度生じないようにするために行います。
大腿四頭筋のストレッチ
純粋に大腿四頭筋の伸張力が低下する事で、スポーツ中に膝蓋骨周囲の組織に伸張性ストレスが強く加わってしまいます。
膝の下にクッションなど敷いて膝に痛みがでないように行います。
また、症状が強い場合は無理に行ってもいけないのである程度落ち着いてから行ってもいいでしょう。
大腿四頭筋の硬結部のリリース
膝伸展機構のスポーツ障害は大腿四頭筋に硬結と言って筋肉のよくない塊がほぼ確実に存在します。
これは筋肉が正常に働かなく、無理な負担が掛かることで出来てしまうものです。
硬結周囲は正確な伸張ができなくなるので、解決するために硬結を軽く圧迫しながら擦る感じでリリースします。
タイガーテールと使うのも1つの手段です。
子供出来るのでいいですね。
タイガーテールは患部に直接行うものではないので、初期から行うことができるセルフケアになり、おすすめですね。
骨盤後傾予防エクササイズ
骨盤の後傾を防ぐ事でハムストリングスの遠心性収縮を可能にします。
ハムストリングスの遠心性収縮ができるようになると大腿四頭筋の過度な収縮を防ぐことができます。
「骨盤後傾予防エクササイズ」に具体的に記載してありますので、参考にして下さい。
着地のエクササイズ
着地の際、骨盤が後傾位になりますと大腿四頭筋が過度に伸張性収縮を要求されますので、骨盤後傾位とならないように着地の練習が必要になります。
「骨盤後傾予防エクササイズ」を参考にして下さい。
また着地音についてはこちら→ジャンプの着地音が大きいとよくない理由
上記の姿勢からジャンプし、できるだけ同じ姿勢で着地します。
着地時に大腿四頭筋とハムストリングスを触り、ハムストリングスの方が硬く、収縮していればOKです。
簡単なセルフケア
大腿前面を軽く圧迫しながら擦る事で、筋膜リリースを促します。
本格的に行うのは難しくても、きちんと行う事で症状の悪化を防ぐことが出来ます。
また膝周囲は腱も多いためこちらも参考にどうぞ
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病のテーピング
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大腿前面上部から膝蓋骨を介し脛骨粗面まで貼ります。大腿四頭筋の走行と同じですね。
膝の下にクッションなどを入れ、膝が完全に伸びきらないように注意しましょう。
膝を完全に伸展したままテーピングを行うと、膝の屈曲(曲げる)運動がしにくくなり、スポーツをする上で弊害となる為です。
最後の一枚は膝蓋骨高位がある人のためのテープになります。
ですので、膝蓋骨高位が無いようならば貼る必要はないでしょう。
膝蓋骨高位がみられる場合は膝蓋骨を上から押させるテーピングを貼ることもあります。
しかしテーピングに全て頼るのはよくないので、必ず上記の<リハビリ>も行いましょう。
私の場合、テーピングの種類はワーデル、マルチポアを使用します。
■選手目線のテーピングはこちら
■テーピングの種類についてはこちら
■テーピングの貼る時の注意点はこちらから
あくまでテーピングはサポートになります。これで治癒することはありませんので、注意して下さいね。
さいごに
スポーツ障害の名称としてはあまり聞くことない障害ですが、オスグッド・シュラッター病や膝蓋靭帯炎、大腿四頭筋付着部炎と同様の治療・リハビリとなります。
しっかりリハビリを行い、対応しましょう。
以上で「シンディング・ラーセン・ヨハンソン病」の説明を終わりにします。