股関節のインピンジメント症候群から起こりやすい股関節の疾患に関節唇損傷があります。
スポーツ選手でも悩まされるスポーツ障害ですが、今回は関節唇の簡単な説明から手術やリハビリについての解説も行っています。
テスト方法や特徴で当てはまる人は自宅でも出来るリハビリが多くありますので、実践してみてはいかがですか?
股関節の関節唇損傷とは
肩関節や股関節など関節の動かす範囲が広い場合、関節が脱臼しない様にする為や動きを補助するために関節の周りに関節唇という軟骨が覆っています。
その関節唇が下記の原因により痛みが出る疾患を股関節関節唇損傷と言います。
関節唇損傷の原因は大きく分けて2つあります。
1つ目がFAI
FAIは股関節のインピンジメント症候群で関節唇損傷の手術の50%がFAIとされています。
Femoro 大腿骨
Acetabular 寛骨臼
Impingement 挟み込み
の頭文字を取ってFAIと呼ばれます。
インピンジメント症候群は肩関節で有名なケガですが、インピンジメントと“挟み込み”という状態と指すため、身体の至るところで起こりうる可能性があります。
2つ目が寛骨臼形成不全
寛骨臼が成長段階、または生まれつき関節の構造が不十分で変形している状態です。
関節唇損傷の手術の20%が寛骨臼形成不全とされています。
もちろん細かく書くと他にもありますが、大きく分けると上の2つになります。そして今回は特にFAIによる関節唇損傷ついて書いていきたいと思います。
FAIによる関節唇損傷の原因
原因は大きく分けて3つに分類されます。
1.骨盤の問題:大腿骨の受け皿である骨盤の問題です。大腿骨には問題がありません。
2.大腿骨の問題:受け皿にはまる大腿骨の問題で、一番重要視されています。
3.両方の問題
しかしどれかに当てはまっても痛みがでない選手もいます。それは骨盤の動きと身体の動きがしっかり連動して動かせているためです。
つまり上記の骨の原因にプラスして骨盤や体幹の動きがきちんと行えないと股関節の疾患を起こしやすいと言うわけですね。
他にもリスクとして関節がゆるすぎる(先天的に)人は股関節疾患になりやすいと言えます。
また成長期に同じスポーツを繰り返し同じ姿勢でいる事で股関節の成長部分(大腿骨骨端線)が刺激され膨張する事でFAIを誘発するという考えが近年出てきているとのことです。
FAIによる関節唇損傷の症状
本当の初期は股関節の重だるいなどの違和感から始まります
進行とともに股関節を動かしての痛み。
主に膝を持ち上げる”股関節の屈曲動作”で痛みが出やすいですが、他にも内旋、外旋、外転、内転など様々な動きで痛みがでます。
初期の場合に発見されると余程骨の形態が悪くない限りは保存療法でリハビリを行うようですね。
FAIによる関節唇損傷の治療方法
まずはテスト方法の案内です。
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テスト方法
前方インピンジメントテストが有効です。
股関節を可能な限り屈曲し内旋動作を行った時に痛みがあった場合、陽性となりインピンジメントが考えられます。写真の形で右ひざを左肩に近づける動きがテスト方法になります。
いきなり強く行わないで徐々に行っていきましょう。
FAIの特徴的なサイン:Cサイン
FAIが疑われる患者の特徴があります。
大体80~90%の患者が股関節の前面から横にかけての痛みを「Cの字」を書いてこのあたりが痛いというそうです。これをCサインと言います
つまりピンポイントの痛みと言うより漠然とした痛みと言えます。
FAIによる関節唇損傷の手術適応
MRIで断裂がはっきりわかる場合、保存療法(リハビリ)で3ヶ月以上効果がない場合、他の軟骨も痛めている場合は手術の適応になるようです。
FAIは骨の形による影響も強いので、基本的には成長期を過ぎ骨の成長が止まってから行う事が多いようです。というのも成長が止まる前に手術を行ってもその後、同じ問題のある形に骨が成長するととがあるためですね。手術してもまた同じ形に変形してしまったら意味がないのです。
従来の手術ですと筋肉や関節の負担が大きくあまりよくないとされていましたが、関節鏡手術が取り入れられるようになってから、それらのダメージが少なくなり手術を受けやすくなりました。
従来の手術も状況によっては行う場合もありますが、関節鏡手術の方がメリットが多く推奨されるでしょう。
しかし基本的には手術ではなく保存療法(リハビリ)から入りたいですね。
リハビリの目安としてFAI患者の約80%が手術をリハビリで回避できたとのデータがあります(77/96)
アスリートの場合は約82%が平均3.6ヶ月で復帰できたとのことです(27/33)
FAIによる関節唇損傷のリハビリ
手術はまだ早い。あるいは手術をしたくない人のためのリハビリになります。
基本的にFAIの患者は骨盤-股関節単独の動きが悪くなっているケースが非常に多いので骨盤-股関節の動きを出すことが大切になります。もちろん、骨盤-体幹の連動も同様に大切です。
また体幹のインナーマッスル、いわゆるコアと呼ばれる筋肉がきちんと働かないとアウターマッスルが過度に働き、結果それは骨盤の動きを悪くしてしまします。
リハビリのやり方をご覧ください。
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お尻周りのストレッチ
お尻が硬いと骨盤の前傾運動が苦手になるので臀部の筋肉の柔軟性は大切です。
<大殿筋ストレッチ>
上向きで寝て足を組み、そのまま横に倒れれば殿筋のストレッチになります。更に踵についている曲げていくとストレッチが強くかかりますが、人によりかかりやすい角度があるので自分でいいと思う角度で行いましょう。
<外旋筋のストレッチ>
うつ伏せでストレッチを行う方の膝を90°ぐらいに曲げます。そのまま足を外側に倒すことで外旋筋のストレッチとなります。
反対のお尻が上がりすぎるとストレッチがかかりにくいので程よく行いましょう。左右同時に行ってもいいですね。
骨盤エクササイズ
骨盤の動きは股関節と体幹の動きに直接影響するので非常に重要です。
四つ這いになり①腰を真っすぐ行う動き、②腰を反ららせる動き、③腰を丸める動きの3パターンをしっかり行いましょう。
体幹トレーニング
体幹が安定しないと股関節にぶれが出たりするため、体幹の安定感は大切です。
体幹トレーニングについては専用ページをご覧ください。
上半身との協調エクササイズ
上半身とのバランスも大切になります。運動は下半身のみで行うわけではないので当然ですね。
まずはドロウインをし、そのまま手と反対の手を出来るだけ真っすぐ上げます。キープ出来たら膝と肘をくっつけるように曲げていきましょう。くっつけたら離して最初のポーズに戻り、それを繰り返します。
ドロウインがキープできる数だけ行って下さい。多い回数は無理なはずです。セットは3回ほどでいいでしょう
股関節を意識したスクワット
筋トレの要素もありますが、意識として大切なのは股関節と使うと言う事です。
最初は画像の様に椅子からの立ち上がりを意識して行うといいですね。大切な事は手を股関節に置きそれをつぶす様に意識する事です。
これらはあくまで個人にあったと言うより股関節の問題に克服するのに必要と考えられるものを紹介しました。
中には全部必要な選手もいるかもしれませんが、部分的に必要とする人もいるでしょう。
その為細かい指導はリハビリに強い整形外科や整骨院、整体院へ通院する事をおすすめします。くれぐれも レントゲン→MRI→いきなり手術 と言った王道問題パターンの整形外科、病院には行かない様にして下さいね。
どうだかわからないって方は電話やネットでの検索をおすすめします。
二次的なスポーツでのケガに注意
関節唇損傷があり保存療法で頑張った場合でも二次的なスポーツ障害を起こすリスクがあります。
恥骨結合炎、股関節脱臼、大腿骨疲労骨折などは関節唇が損傷しているとリスクとなります。関節唇損傷が原因で他の怪我をした場合は手術の検討が必要ですね。
しかし股関節の手術は見極めや経過をみる事が重要です。
手術についても専門医が最終的には自分で決めることと語っています。関節の形状が余程悪い場合は手術をすすめるようですが。
股関節のケガの参考文献
今回はスポーツメディスンのNo.180とNo.157を参考にさせていただきました。
2016年の4月に股関節の関節鏡での関節唇修復が保険適応になったとのことですので、手術自体は今後大きく伸びていくでしょうね。
しかし画像だけで手術手術とすすめるドクターは信用なりません。
患者の歩き方、股関節の使い方、機能、将来性などをトータルで評価できるドクターは信用する事ができ、本当に素晴らしい先生だといえるでしょう。
まあ日本に何%いるかわかりませんが。
おわりに
股関節のインピンジメント症候群は少なくはない疾患だと感じていますが、それが手術まで行くとなると多くはないでしょう。
数字で出ている様にしっかりリハビリを行う事で改善の見込みがありますので、悲観的になる必要もありません。
違和感があるようでしたらテストしてみて不安であれば医療機関を受診しましょう。受診が嫌であれば上記にあるリハビリを参考に行ってみて下さいね。
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