テニス肘として有名な上腕骨外側上顆炎は日常生活でも生じる疾患になります。
ここではテニス肘の原因や治療、リハビリはもちろんテーピングのやり方も掲載していきます。
肘の外側が痛いかも?筋肉が張るような気がする?
外側上顆炎が発症・進行している可能性があるので気を付けて下さい。
テニス肘(外側上顆炎)とは
肘の外側の部分を外側上顆と言い、この部分に負担のかかる使い方をすることで炎症が起こった状態を上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)と言います。
上腕骨外側上顆炎はテニスで痛みが出る事が多いので、通常テニス肘と呼ばれているわけですね。
統計によるとテニス人口の1/3は過去・現在でテニス肘を経験しているとのこと。
また頻度でも毎日プレーする人は50%弱、3.4回では30%、1.2回で25%と明らかにテニスを行う回数に比例しています。
テニスをしない人でも日常生活や仕事内容でも痛みが出る事がありますが、外側上顆炎というよりもテニス肘と言った方が認識しやすいので、テニス肘と説明する事があります。
厳密には骨の付着部か筋肉自体の痛みと痛みが出る所が多少ずれる事がありますが、ひっくるめてテニス肘と呼びます。
テニス肘(外側上顆炎)の症状
テニスではバックハンドでのインパクト時に肘外側の痛みがケースとしては多いでしょう。ただ症状が重症化するとフォアハンドでも痛みを生じます。
日常生活ではタオルを絞る動作や何かを摘まむ際に痛みを生じます。
マウスをクリックする際に痛みが出る事もあります。
テニス肘(外側上顆炎)の原因
バックハンドの際に手関節の背屈筋(手首を上げる筋肉群)が十分に作用する前にボールをインパクトする事で、手関節背屈筋のはじまりの部分である、肘関節外側部に過度に伸張性ストレスがかかり生じます。一部、指の伸筋でも生じます。
手関節背屈筋が十分に働かない原因として肩関節水平外転(手を挙げた状態から後ろに動かす動作)の動作が遅れる事が原因となります。
さらに肩関節の水平外転が遅れる原因として、筋疲労によりしっかり振れない・打球にしっかり追い付けない為インパクトが身体から離れ過ぎている、などもあります。
つまり野球肘と同様でスポーツ障害の特徴として運動連鎖の悪循環で生じる典型的な障害と言えますね。
またラケットの問題により、テニス肘を誘発する場合もあります。
道具については下の内容を参考にして下さい。
テニス肘の診断とテスト方法
テニスを行っていて肘外側部に痛みを生じていればテニス肘(上腕骨外側上顆)と判断してよいでしょう。
簡単なテスト方法もありますのでご覧下さい。
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テニス肘のテスト方法① <手関節伸展テスト>
- 肘は伸ばして、手首は曲げる。できれば手もグーにする
- 上の状態のまま手首が上に上がらないように、検査する人は押さえておく。この時肘は伸ばしたまま。
- この時に肘周辺に痛みがあれば、テニス肘(外側上顆炎)の可能性が高くなります。
↓テニス肘の簡単なテスト方法
テニス肘のテスト方法② <指伸展テスト>
上のテストを指でも行い、より細かい検査をすることができます。
どの指でも検査する事ができますが、人差し指~薬指の三本を検査するといいでしょう。検査する時は1本1本行って下さい。
- 肘は伸ばして、手首は曲げる。その時指は完全に握らず、テニスボールを握るぐらいの空間は空けておく。
- 上の状態のまま指が上に上がらないように、検査する人は押さえておく。この時肘は伸ばしたまま。
- この時に肘周辺に痛みがあれば、テニス肘(外側上顆炎)の可能性が高くなります。
これらのテストを組み合わせる事で手首の筋肉か、指が原因か判別する事ができます。
例)
- 手関節背屈テスト陽性
- 中指の伸展テスト陽性
- 示指(人差し指)の伸展テスト陰性
→手関節伸筋、中指伸筋が原因
- 手関節伸展テスト陽性
- 指の伸展テスト陰性
→手関節伸筋群が原因
テニス肘(外側上顆炎)の治療とリハビリ
治療に関しては整形外科、整骨院どちらでも問題ないでしょう。
軽症な場合はセルフケアでも十分改善されますが、痛みが強い場合は休むようにした方が結果的に早く完全復帰できます。
休んでいる間は下記のリハビリを行い、フットワークなどボールを打たない練習をメインに行います。
手関節背屈筋のストレッチと肘関節・手関節の正しい筋出力をリハビリとして行います。
ストレッチのやり方
肘を伸ばした状態+手首を曲げた状態+肘の関節を上に向けた状態で反対の手で手関節を曲げていきます。
(肘関節伸展位、手関節屈曲位、前腕回外位)
前腕の回外を意識して行うのがポイントです。また手指を曲げるとよりストレッチが掛かります。
↓肘はきちんと伸ばして行うのがポイント
↓正面から見たテニス肘のストレッチ。前腕は回外で行った方が強くかかる
前腕の動き
左:前腕中間位 真ん中:回外位 右:回内位
前腕の内側の筋肉をゆるめる
肘の外側に痛みが出る方は腕の内側の筋肉が硬くなっている事が多いです。
硬くなっているところをゆるめる事で肘が正しい動きに近づきますので、痛みの改善に繋がります。
腕の内側の短縮した筋肉は自分でケアが難しいですが、内側を触ってみて硬くなってきると部分を圧迫しながら関節を動かすとゆるみやすいです。
肘を伸ばしたまま硬い部分を圧迫し、手首の曲げ伸ばし(おいでおいで)をするといいでしょう。
筋出力のやり方
特定の筋肉ばかりに負荷がかかっているとバランスが崩れてよくありませんので、肘関節周囲筋の筋緊張を整えます。
1㎏程の軽い重りを持って行いますが、痛みが出る場合は重りを持たずにゆっくり行いましょう。
手関節のみで行うように注意して下さい。肩関節や肘関節が動いては効果が出にくです。
(肘関節に関与する筋肉の多くは手関節の動きに関与しますので、手関節が大事になります)
座った状態で行います。
肘関節屈曲位で前腕の回外・回内動作
肘関節屈曲位で手関節の屈曲・伸展
(肘関節屈曲位で肘が顔の前の状態から)肩関節水平外転‐肘関節伸展‐手関節背屈の連動動作
画像ではちょうどいいのがなく代用しましたが、本来はダンベルのようなシャフトが持ちやすくていいでしょう。
これはシャフトは0.6kgですが、比較的安価なので購入しやすいかと思います。
またはこのようなタイプでもいいでしょう。重さもちょうどいいですね。
これ以上だと2.5kgのものが多く、少し負荷が強すぎるかもしれません。
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フォームの確認
- テイクバックの動作が遅れていないか
- 肩関節の水平外転がしっかり行われているか
- ボールのインパクトが身体に近い位置にあるか
- 手関節の背屈が遅くなっていないか(しっかり背屈してインパクトを行うか)
をチェックしましょう。
痛みがあまりにも強い場合や、難治性の場合は注射を行う事もあるかもしれませんがおすすめしません。しっかりリハビリを行えば対応できるはずです。
テニス肘のテーピングとサポーター
テニス肘のテーピングは手首を上げる筋肉に沿って貼る事で痛みの緩和やサポートになります。
貼るポジションは「肘を伸ばした状態+手首を曲げた状態」で行います。
貼る範囲は「手の甲から上腕骨外側上顆部」に向かって貼りましょう。
貼り方は過度に引っ張りすぎないで自然に貼れるといいですね。
あまり強く引っ張って貼るとかぶれの原因になるので気を付けましょう。
また貼る前にテーピングの長さを測り、カットしておくといいですね。
↓テニス肘のテーピングのやり方
↓但し重症の場合はテーピングでもカバーできないので休む方がいい
テニス肘のサポーターについて
テニス肘のサポーターは肘の少し下に横に止めるバンドタイプが多いですが、このサポーターは個人的にはおすすめしません。
なぜなら筋肉の走行に対し直角に行うサポーターを長期間使用しながらプレーしますと、サポーター周囲の筋肉が硬結しやすくなると考えているからです。
筋肉に直角に圧迫を行うと一部の負担は減りますが、それ以外は普段より短い範囲で筋肉の収縮を強要されますので。
下記もチェックして下さい。詳しく説明しています。
一時的な使用や痛みが強く、時期的にどうしても練習を行わなければならない場合以外はあまりつけてほしくないですね・・・・
ただテーピングと軽めのサポーターなど組み合わせるて行うのもいいでしょう。
テニス肘に使ったテーピングについて
今回のテーピング見やすくするためにトワテックのキネシスを使用しました。
■選手目線のテーピングの比較記事はこちら
■選び方はこちら
■大切なテーピングの貼り方はこちらから
テニスの道具での悪化について
テニス肘は道具の選択でも痛みが出やすかったり、出にくかったりします。
具体的なポイントは2つです。
ガットのテンション
ガットをあまり強く貼り過ぎると反発が強くなりますので、身体への負担は大きくなります。
グリップの太さ
グリップが太すぎると握力が必要になりますので、身体への負担は大きくなります。
女性や子供は気を付けたいですね。
さいごに
典型的なスポーツ障害であるテニス肘ですが、しっかり原因をあらかじめしっかり理解していれば障害を生じる前に対応できます。
普段の練習から対策を取り入れたり、雨の日のトレーニングを見直すことも大事な要素になりますね。
上記のリハビリに書いてる“フォームの確認”をそのままフットワークや、障害予防エクササイズとして行ってもいいでしょう。
スポーツ障害の原則は予防になることも忘れないで下さいね。
他のセルフケアの方法やアイテムはこちらら
以上で「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」の説明を終わりにします。
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