腰椎分離症はスポーツの怪我の中で大きな問題となります。なぜなら分離症は体幹部の怪我ということであらゆる動作に関与するためです。
また初期の段階では気づきにくいため症状が進行してから気づくことが少なくなく、本人だけでなく指導者・管理者が常に気を付けなければならない障害になります。
きちんと理解し予防と再発防止につとめたいですね。
この記事は成長期の子供を対象に書いてありますが、成人の分離症の参考にもなるかと思います。スポーツ腰の痛みがある選手は是非ご覧ください。
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腰椎分離症とは
腰椎分離症とは腰の疲労骨を指し、細かく説明すると椎弓と呼ばれる脊ずいを覆っている部分になります。
片側に生じることもありますし、両側にも起こりえます。
両側の場合は腰椎分離すべり症に移行することがあり、成人してからも腰痛の原因になるので注意が必要です。
腰椎分離症はストレス骨折、疲労骨折としてスポーツを活発にする成長期の子供に多いことで知られています。
また個人的な解釈ですが、腰部の伸展ストレスで生じたものは両側性に、回旋ストレスで生じたものは片側性に生じると考えています。
多いの部位は4番目と5番目の腰椎です。
腰椎分離症の症状
初期であれば腰痛として軽度の運動時痛があります。
進行するにつれ腰を反らせる・回旋するからランニングなどでも痛みを訴えます。
競技に合わせてジャンプやキックなども困難になり運動自体が痛みにより満足にできなくなり、中には日常生活でも痛みを感じる事もあります。
腰椎分離症の原因
腰椎分離症は「胸椎と股関節の可動域が低下により腰部の負荷が増える」ことによるものが大きいです。
つまり腰部自体の問題ではなく、トータルして身体の使い方の問題といえますね。
そもそも腰部は前屈以外動かすのに向いているパーツでなく通常スタビリティ関節、すなわち身体を安定させる為にある関節になります。
腰部は安定を担当するのに比べ胸椎と股関節はモビリティ関節で主に動きを担当するパーツになっています。そしてその上で特に問題となるのは回旋と伸展(反らす)の動きです。
本来担当ではないパーツに必要以上の仕事(捻って、反らせて)をさせていては、剪断力と圧迫力が多く作用し、限界が早く来るのは必然です。
それぞれ身体のパーツには役割があり、特に動きに関しては胸椎と股関節に頑張ってもらわないといけません。
「スタビリティ関節とモビリティ関節について」にも詳しく書いてあります。
いくつか具体的な例をあげておきましょう。
腰椎分離症が多いスポーツ
具体的な例を挙げて解説していきます。
ケース① 体操・新体操
身体を反らせる際に、胸椎の伸展・股関節の前面の柔軟性が少なく、腰部ばかりで反らせる。
新体操の選手の多くは分離症をもっています。
ケース② サッカー
蹴り足の股関節の前面の柔軟性不足により、腰部を反らせて蹴る。
サッカーでの腰痛・骨盤痛はこちらで具体的に解説してありますのでご覧ください。
ケース③ 野球
バッティングの際、腰部の回旋を強く意識し行い、本来動かすべき胸椎・股関節の運動が不十分。
バッティングで捻るポイントは上でも説明してある様に胸椎と呼ばれる胸のパーツです。
上記の様に分離症は競技特性により様々な動作が原因になります。
回旋系:野球、ゴルフ
伸展系:新体操、サッカー、野球、バスケ
腰椎分離症の診断について
確定診断にはレントゲンやCTが必要になります。症状からもある程度は推測できますが、怪しい場合は早期に検査を受けるべきです。
またレントゲンを撮ることにより新鮮な怪我か、それともある程度時間が経過したものかが分かりますので、状態に合わせた治療ができます。
ですので整形外科(できれば治療施設がある整形外科が望ましい)の受診をおすすめします。
腰椎分離症の治療とリハビリ
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腰椎分離症の治療やリハビリは検査結果によって治療方法が異なります。
進行具合によってことなりますが、下記の期間は硬性のコルセットを使用し腰部の回旋と伸展を防止します。
骨癒合率 | 癒合期間 | |
初期 | 94% | 3.2ヶ月 |
進行期① | 64% | 5.4ヶ月 |
進行期② | 27% | 5.7ヶ月 |
終末期 | 0% |
スポーツ理学療法学
競技動作と治療アプローチ より
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通常の骨折も同様ですが、レントゲンにて骨折部が“きれい過ぎてギザギザがない”、“周りのモヤモヤがない”状態だとかなり厳しくなります。
これらは医師が判断してくれるでしょう。
初期ははっきりとした骨折と言うより部分的にあるかな?ぐらいの状態です。このころだとまだ治りは早いですね。
進行期①は上の二つの条件が問題ない場合。
進行期②は二つの条件に問題がある場合。
それぞれ癒合率に大きな差があります。
終末期になると「偽関節」と呼ばれ、骨の癒合は望めません。
こう見ますと他の障害や疾患に比べ、固定期間はかなり長いです。
しかし固定期間は何も固定だけすればいいだけではありません。予防にもなりますので下記のリハビリを参考にして下さい。
- 胸椎の伸展・回旋エクササイズ
- 股関節前面の柔軟性の確保
- 大腿部前後の柔軟性の確保
- 腹腔内圧エクササイズ
具体的には下記になります。
必ず痛みがない範囲で行い、脱力しましょう。
※個人的にはきちんと行えば負担は少なくおすすめのリハビリとなりますが、正しく出来ない場合は悪化する可能性があるので、気を付けましょう。
<深呼吸>
しっかり胸椎・胸郭を意識して、胸で呼吸しましょう(胸式呼吸)。
上肢を挙上して行うとより効果がでます。
<パピーポジション>
深呼吸と並行してパピーポジションを脱力して行います(腰部に対してではなく、胸部に対して行うので角度は軽め)。
脱力すべき部分は腰の筋肉になります。自分では判断が難しいので、パートナーに触って確認してもらいましょう。
また脱力が難し場合、胸の前にクッションなどをいれる事をおすすめします。
↓ここまでいくとやりすぎで、逆に悪化するので注意です↓
<ストレッチポールを使用した胸椎のエクササイズ>
ストレッチポールを身体に対して直角になるようにし、上向きに寝て胸椎を反らせましょう。
上部・中間部・下部と三か所に分けて行うといいかと思います。
注意点として膝を曲げて行わないと腰部の反りが強く出てしますので、胸椎のエクササイズになりません。
それぞれ胸式呼吸ができると、なおいいですね。
ストレッチポールについての説明は「体幹トレーニングの正しいやり方」をご覧ください。
<他動的に胸椎回旋エクササイズ>
横向きに寝て膝を曲げます。上側の腕は身体の横に置き、全身を脱力します。
パートナーは腰の部分に座り、腰・骨盤が動かないようにします。
骨盤と肩に手を当ててゆっくりと背中後ろに捻っていきましょう。左右行います。
詳しくはこちらをご覧ください。
<股関節前面のストレッチ>
ベッドや台などを使うと簡単にできます。なければ床でもできます。
ガイコツ君に様に行いましょう。
腰部の伸展(反り)が強く出ないように注意して行って下さいね。
<大腿部のストレッチ>
これはオーソドックスなストレッチでいいですが、出来れば動的ストレッチが望ましいです。
前面の動的ストレッチは難しいですが、後面(ハムストリングス)はジャックナイフストレッチがおすすめです。
<腹腔内圧エクササイズ>
に詳しく掲載してありますので参考にして下さい。
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上記の様に(上記の以外にも)リハビリやエクササイズはあり、やるべきことは少なくありません。
怪我の動けない期間で、正しく動くようにするのが一番望ましいです。
ただし最初から自分だけで行うと腰の反りが出てしまい悪化してしまうおそれもあるので、必ずパートナーによるチェックをしてもらって下さい。
腰椎分離症のテーピングについて
腰椎分離症にはテーピングの効果があるのでしょうか?個人的にはテーピング行う意味を見出せませんが、分離症に伴い生じる腰部筋の負担軽減には良いかと思います。
しかし決して行ってほしくないのが、分離症を自覚しながら無理に運動を続ける為にテーピングを行う事です。
テーピングは痛みを軽減しますが、分離症を治すものでありません。
勘違いしてテーピングをしたまま負担をかけ続けると間違いなく悪化しますのでご注意ください。
腰部のテーピングに興味があるある方は下記よりどうぞ。画像もあります。
さいごに~腰椎分離症で絶対に気をつけなけばならない2つの事とは?~
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一つ目は「早期に発見する」ということです。
早期に発見することが出来ればそれだけ早く治すことができ、何より重症化を防ぐことができるのが大きいです。
しかし腰椎分離症は進行が目で確認しにくく、症状が進行しやすいのが特徴でもあります。
指導者の目からも全員の状態をチェックするのは困難ですし、何より怪我というのは子供たちは“言いにくい”んです。
なので選手とのコミュニケーションや距離感も大事になりますし、出来れば部活やクラブチーム単位で定期的にコンディショニングチェックをすることを強く勧めます。
二つ目は「治療時の子供のメンタルの問題」です。
分離症は進行してから治療すると時間がかかります。
長期の治療を要する中、子供たちはどんな心境でしょうか?
- 周りはうまくなっていく中、自分は参加できない・・・
- 置いていかれる・抜かされる。
様々な心境があるかと思いますが、基本的にはマイナス・ネガティブ・後ろ向きな状態になります。
しかし焦っても早く治るものではなく、怪我をしたことをしっかりと受け止めさせて、その上で何が出来るかを教えてあげるのが大事になります。
そして怪我をしてもやるべきことは【治療】にも書いてある通り、しっかりあります。
怪我をする前よりパフォーマンスが上がるように、しっかりリハビリを行っていきましょう^^
以上の二つは腰椎分離症で重要なことになりますので、しっかり押さえておきたいですね。
これで「腰椎分離症」の説明を終わりにします。