近年では骨折に対して整形外科などで超音波治療を行う事が多くなりました。
実際の骨折については別の機会にまとめるとして今回は疲労骨折に焦点をあてて解説したいと思います。
難治性となりやすい部分と難治性となってしまった時の対応とは?
基本的に世間に大々的に出ているものは「いいところのみ」のデータです。
さいしょに
疲労骨折の治療で大事な事はいかに競技の中止・安静期間を短くするかと言う点です。
その問題の改善となるのが低出力超音波パルス療法、つまり俗にいう超音波治療となります。
今回はその超音波治療についての解説となります。
【重要】低出力超音波パルス療法とは
低出力超音波パルスとは訳してLIPUS(Low Intensity Pulsed Ultrasound)といいます。
超音波治療とは低出力の音圧刺激を与えることで骨の治りを早くし、痛みの軽減・治ゆを目指す物理療法になります。
聞くだけですと すごい と思うかもしれませんが、実際は問題があります。
それは医学の世界では重要視されているエビデンスという正確なデータがまだ少ない事です。
一部では効果がないと言われていたり、反対に高い効果があると言われたりします。
多くのこの超音波治療の効果として平均30%早く治ると言われていますが、実際のデータとしては条件が厳しく全ての骨折で30%早く治るというわけではありません。
しかしそれでも実際に早く治る例も多いため、多くの治療施設で使われています。
今回は様々なデータの紹介がある中、疲労骨折に焦点を当てたものがありましたので紹介します。
2013年ですので、現代では多少違いがあるかもしれません。
そして超音波治療自体も100%に近いデータが集まっているわけではありませんので「100%ではないけど、実際の効果はあるだろう」という考えで読んで頂けると幸いです。
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低出力超音波パルスの効果を簡単に説明
効果は上記にも書いてありますが、音圧刺激により骨の治りを早くし、痛みの軽減・治ゆを促進します。
骨と言うのは適度な刺激があるときちんと作られます。地球で言うと歩いたりの刺激がいいですね。
逆に寝たきりの方や宇宙飛行士は骨が弱くなり、俗にいうスカスカとなってしまいます。
近年では宇宙飛行士もその対策はしてあると思いますが。
これを骨折部に適度な刺激を人工的に作り出す事で治りを早くするわけですね。
比較的効果が見込める疲労骨折・難治性となりやすい疲労骨折
疲労骨折の部分や傾向により超音波の効果が異なるようです。
骨折の早期改善を図ると言っても効果が出にくい疲労骨折があるんですね。
この場合の効果とは痛みの除去となります。
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効果が出やすい疲労骨折
骨吸収疲労骨折
骨吸収とは、本来骨があるべき部分が一部なくなってしまっている状態です。
少しずつ進行しある日急に症状が強く出るタイプで、これらは経過が悪く手術する事も少なくありません。
しかし下記の疲労骨折に効果がみ込めます。
進行具合や症状、スポーツの度合いによって手術か超音波を使うか決まります。
- 脛骨跳躍型(スネの内側の真ん中部分に多い)
- 膝蓋骨(膝の皿)
- 第5中足骨(足の甲の外側)
- 足の舟状骨(足の甲の内側)
- 足関節の内くるぶし
- 肘の後ろの部分
効果が出にくい疲労骨折
骨硬化型疲労骨折
主に荷重による疲労骨折になります。
亜急性で発生する事が多く、基本的に保存療法で治します。
- 踵
- 脛骨内顆(膝の内側のやや下)
- 仙骨
骨形成型疲労骨折
疲労骨折部位が膨らみ。骨に出っ張りを感じる骨折となります。
比較的急性的に発症します。
- 脛骨疾走型(スネの内側の上と下の部分)
- 腓骨(スネの外側)
- 中足骨(足の甲)
- 大腿骨
超音波に効果が出にくいと言ってもこれらの部分は通常手術をしないで保存療法の範囲となります。
骨折で低出力超音波治療の受け方
お、超音波よさそうじゃん!って思ってもどこで、どのように受けられるかが分からないと意味がありませんよね。
これには2つの選択肢があります。
医療機関で受ける
これは通常の選択になります。
レントゲンで正確に進行具合を確認できるのでこちらがオススメです。
強さなどの管理もしてくれるので安心です。
注意点としてそもそも超音波が置いていないと問題ですので、電話やインターネットで確認して下さい。
ただし、保険適応は手術をした場合や難治性である場合など条件がありますので要確認です。
窓口での価格も異なります。
レンタルして在宅で治療
通院が難しい場合、一定の金額を払う事で自宅で行う事が出来ます。
帝人のセーフスは全国サポートをしていますね。
超音波自体の扱いは簡単ですので安心して使えます。
基本的に通院している担当のドクターに言えば配慮してくれます。
セーフスをレンタルした場合の期間と費用
健康保険が使えますが、パターンにより期間や金額が異なります。
手術をした場合:最長3ヶ月:15,000円(3割負担)
難治性の場合:最長12ヶ月:37,500円(3割負担)
手術をし難治性の場合:最長15ヶ月:52,500円(3割負担)
費用は初回のみで毎月かかるものではありません。
今回は前田病院さんのHPを参考にさせていただきました。
疲労骨折で手術を考慮するポイント
重要なポイントである、手術の分岐点についてです。
多くの例で超音波は3ヶ月程で効果がみられるとのことから、3ヶ月使用して痛みの改善が見られない場合は手術を考慮する必要があります。
しかし難治性でないと保険適応にならないし、難治性の場合手術も考慮する必要がある為、なんとも歯がゆい状態になってしまいます。
疲労骨折と超音波治療。最悪なパターンは?
約3ヶ月で難治性と診断→超音波を3ヶ月使用し手術を考慮しなくてはいけない。
となった場合それだけで約6ヶ月の時間が必要となります。
って言うかその前に改善されるか、手術の判断をしていると思いますが・・・
グダグダしているならば部位によりますがしっかりと説明を受け、最初から手術をした方が早い場合もあります。
治療計画の説明を理解する事が大事な時間を無駄にしない大切な事となります。
参考資料
今回は月刊誌のOrthopaedics(オルソペディクス)2013/6号を参考にさせて頂きました。
同業者で整形外科分野に強い関心がある方は一度チェックするといいでしょう。
Orthopaedicsは整形外科分野に強い月刊誌になります。
私は1年ですが、年間購読をしていました。
今はスポーツメディスンとトレーニングジャーナルの2冊を年間購読をしているため、お休み中です。
機会があればまた購読したいですね。
専門性が高いので一般の方は読むが大変かもしれません。
2013/6の単発はこちら
Orthopaedics (オルソペディクス) 2013年 06月号 [雑誌] 中古価格 |
定期購読は私もスポーツメディスン、トレーニングジャーナルでお世話になっているFujisanがオススメです。
最近は保険点数を取らずに治療する治療機関も多い 追記8/9
知り合いの整形外科のスタッフに効くと最近は難治性と判断されないでも治療を受ける事が出来る治療機関も多いようです。
通常の骨折治療の中で料金の上乗せがなく受けられるみたいですね。もちろん上乗せするところもあるかもしれませんが。
一度電話なので問い合わせてみてもいいかもしれませんね。
「低出力超音波治療は別途お金がかかりますか」なので問題ないでしょう。
もちろん器具がなければ治療は出来ませんのでご注意を。
考察とおわりに
疲労骨折に低出力超音波パルスが有効かどうかについては今回の参考資料では正直データ量が少ない為、はっきりと言えませんが「効果は出にくいであろう」となりました。
安静による保存療法よりも早く治る結果が出た骨吸収型疲労骨折は基本的に慢性の経過をたどる事が多いので、わかったころには進行している事があります。
しかもその時には手術が必要である場合もあるので、なんとも歯がゆいですね。
そもそも大事な事は疲労骨折自体を減らすことです。
もちろん運動量によってはそれがかなわない事があるのは理解していますが、それでも日々のチェックでリスク管理は出来ますよね。
出来るだけ近いうちに種目別の疲労骨折が起こりやすい部分のチェックポイントを一覧でまとめたいと思います。
超音波も一応保険適応とされていますので効果はあるのでしょうが、保険適応されているものが全て正しいものではないことに注意が必要です。
まだまだデータとして割れているのがその証拠です。
そして何より正しい医師の診断があることが前提となるでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
最新のエビデンスなどがありましたらお手数ですが「お問合せ」より連絡を頂けますと幸いです。
以上で「疲労骨折治療で超音波LIPUSが有効な場合と手術を考慮する場合」を終わりにします。
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